9月1日(月)から、東京大学名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク(WAN)」の理事長である上野千鶴子氏をお招きして、東南大学日本語学科で一週間にわたる集中講義を開講していただきました。そして、その一環として、9月4日(水)の午後、外国語学院のホールにて「ネオリベ改革がジェンダーにもたらした否定的効果」をテーマに講演会を開催いたしました。
上野千鶴子氏は日本で最も著名な社会学者であり、日本の女性学、ジェンダー研究のパイオニアであります。数多くの研究成果を出されており、学界で高く評価されるとともに、一般社会での知名度も高く、その著書は普通の人々にも愛読されています。著書『近代家族の成立と終焉』『おひとりさまの老後』『女ぎらい』などは中国語にも翻訳され、人気を博しています。
今年4月12日に開かれた東京大学入学式の祝辞で、女性を差別した東京医科大不正入試問題に触れ、日本社会に根強く存在している女性差別問題を指摘したことで、大きな反響を呼んだ上野氏は、今回の講演会では、日本政府が推し進めているネオリベ改革がもたらしたジェンダーバイアスに重きを置きました。まず上野氏は、日本女性を積極的に社会進出させている一方で、女性を非正規雇用労働者として留め置き、安価な労働力として消費するネオリベ改革が、実は女性に二重の負担を背負わせているという問題点を暴露しました。そして上野氏は、女性のさまざまな分野への進出の必要性は認めつつも、その進出そのものが終点ではなく、それはあくまでツールであり、大事なのは女性の経験を生かし、よりよい社会を作ることにあると演述しました。つまり、長い間、子供や老人、患者といった弱者のそばに寄り添ってきた女性たちは、非暴力の実践を日々経験しており、それは助け合いの社会、弱者が弱者のままで尊重される社会の創出に寄与できる貴重な経験であるということです。講演会当日は、定員200人の会場に300人以上の参加者が集まるほどの大盛況でした。
また、集中講義において、上野氏は主に、「ジェンダー理論と日本におけるジェンダー研究史」「家父長制と資本制の女性への二重の抑圧及び近代家族制度の終焉」「高齢化社会における介護問題と人生の最期における多様な選択」という三つのテーマで、分かりやすく語ってくださいました。そこでは、日本語学科の学生と中日におけるジェンダー問題や高齢化の問題をめぐって意見交換を行い、さらに日本語学科の教員向けに質的研究法KJ法のゼミを行うなど、上野氏から貴重な機会をご提供いただきました。
(文/陸薇薇、韓暁 写真/王颐寧、陳祥雨)